Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
――これはすでに前日から分っていたことだが、日吉彼岸所における行宮のあたりの色めきは一ぺんに春が来たような騒ぎに見える。公卿侍臣たちは、抱きあって泣いた。或る者は、展望のきく所へ駈けのぼって、堅田ノ浜から整然と進んで来る黒い長途からの軍列へ手を振っていた。わけて、俄に明るさの流れていたのは、准后の一院やら、女御小女房などの密まっていた避難所だった。
そうしたうちに、麓からは、
「顕家、参内」
の由が行宮へ聞えて来た。
お待ちかねだった。生やさしいお待ちようではない。後醍醐はここ十数日の憂色も初めて、何処かにほころばせて、
「来たか。――あの花陵王がやって来たか」
と、お口をついて仰っしゃったほどだった。
花陵王とは、かつて、顕家が十四のとき、花の御宴に陵王を舞ってお目にとまったときからの、帝が彼をよぶ愛称だった。――その顕家は十八となり、花の将軍となって、お目の前にぬかずいていた。後醍醐は彼の援軍をえて、再生のお気もちでもあったが、あの小陵王が、こんなけなげな者になったかというご感慨なども入りまじり、あらゆるおことばで、顕家の労をねぎらわれた。
「…………」