Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
瘧病
だと医者はいう。
いまはそんな病名はない。「和名類聚鈔」の病名部によると一名瘧病ともただ瘧ともいい、寒熱、時ヲ措イテ振フ、とあるから今の流感に似て急性な症状でもあったろうか。
噂は、嘘ではないのだった。
――ところが、この夜、
「なに。ご病中だと。ならば御病間でさしつかえない。取次げ。通さんなら通るまでだぞ」
と、表の方で、あらあらと、家臣たちをどなりつけていた者がある。
右衛門ノ佐義助だった。
すこし酒気もおびている。同夜、千種忠顕の邸で話しこんでいた彼。その足であった。何か、兄の義貞について、腹をたてて来たものらしい。
そこの病間へ、
「ただ今、ご舎弟様が」
と、家臣たちのあわただしい取次があったときは、もう渡りの廊のあたりで、脇屋義助の大きな足音がしていたのだった。
勾当ノ内侍は、いや麗子は、まだ曠れては、一族の人と顔を合せていないので、
「私は」
と、いそいで、となりの間へ立ちかけた。
「いや」
義貞は、裳を抑えて。
「ここにおれ。居てもよい」
すぐそこには、右衛門ノ佐義助のいかつく坐りこんだ姿を男女は見ていた。さすが薬湯の匂いやここの病臭は、義助の不作法をちと鼻白ませたふうだった。