Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
上洛ときめているだけだ」
「ばかな!」
直義はついに張りつめている胸のものを破って、兄の、まともに瞠った眸へ向って、挑みかかった。
「勅が何ですっ、勅が。勅とあれば兄者には、そんなにもありがたいのか。そむけないものなのか。兄者は近頃、どうかしてしまッている!」
尊氏は、屹と、きつい厳しい顔をしてみせた。
「…………」
ものはいわず、それはただ兄の顔になりきっている。
これにぶつかると、直義は幼少からの習性に抑止されている平常の屈従感から、別な“弟の反抗”が抑えようなくむかっとクビをもたげてくる。
直義にはつねに、公の兄なる人と、私の兄とが意識無意識にくべつされていた。――今夜この室にはたれもいない。――直義の感情は丸裸なものになれと内からささやかれている呼吸づかいなのである。兄弟にして一人にひとしい骨肉感が濃厚に彼の血のうちで何をいおうと恐れはないような勇を想起させていた。
がしかし、一瞬だけの反逆だった。いつまで、ものもいわぬ兄の眼に、直義はつい気を崩した。そして位負けみたいな卑屈にすぐ妥協しかかる自分を腹だたしく厭いながらも、
「兄者。……思い出してください。