Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
どんなきれいなものも、そのきれいさにおよぶまい」
蔦王には自分に関係もないはなしに聞えた。道はへんてつもない谷間へ入り、また次の胸突きを先に見上げていた。
ここらの木暗い所には、なお拾われない白骨が土や落葉の下にどれほどあることかわからない。正成の心耳には切々とその浮かばれぬものの鬼哭がわかる。石も草も木も蕭々と物みな哭いているようで、しかもその幽鬼がみな自分を指さして責めく。
――千早の大将が来たよ
――正成が行くよ
――あのひとが千早にたてこもらなかったら、おれどもは死ななかったかもしれないよ
――敵のおれどもも討たれはしなかったろうによ
――死ね死ねとあの人は言ったのに、あの人はすまして生きているよ
――果てなく出世するつもりだろうよ。おれどもだけは浮かばれないよ
今日だけとは限らない。正成はこの附近の谷を通るといつも地下の声を聞く。もろもろな形なき物に足もとをまといつかれる。だから口に真言の秘経をとなえて通るのがつねであった。
そしてまもなく頂上にのぼり着く。豁然と、心がひらけ、夢魔から醒めるのもつねであった。十方の碧空にたいして、恥じない自分をも同時にとりもどしていた。