Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
心に深い傷手があり、それを医すためとしている正成ではなかったが、彼をひきとめる何かがここにあったとみえる。
「おやかた様、いつおもどりになるんですか」
「蔦王か、そちは退屈そうだの」
「でも、水分では、きっと御一同さまが、お案じでしょう」
「ほんに、それも思わぬわしはちとわがままだったな。さよう、そちは山をおりて、なお数日正成はこれにおると、その由、館へつたえておくがよい」
蔦王をも、その日、帰してしまい、彼は籠堂でいよいよ孤独を愉しんでいた。さりとて西行法師の真似びを追うて安らげる自分でないし、また周囲の桎梏は、そんな逃げなどゆるさぬ時代とも知っていた。
だから彼がここで求めたのは、ゆるされるかぎりの、わずかな憩いに過ぎなかったろう。あるいは、帝に直諫申しあげたあとも、その絶望から将来の必然を千々に悩んで、もはや一個の力ではいかんともなしがたい苦悶の自己を、ここでしずかに処理しているのかともおもわれる。
するとすぐ、二日程して。
「や、蔦王。……またもどって参ったか」
「はい、仰せはおつたえ申しましたが、今日は卯木さまのお頼みで、これを」
「なに卯木から? ……これはまた、短冊ではないか」