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Japanische Klassiker mit Furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme

Aozora Bunko

男の出発

マンは、また、涙が出た。

こういうことがあっても、なお、苦しい気持をいだいて、煙草工場に通っていたが、或る風のはげしい日の夕暮どき、マンは、七瀬の水車小屋の横で、大川時次郎とキヌとが、むつまじげに語らっている姿を見た。観音堂のかげから、眼を据えた。

遠くからで、言葉をききとることはできなかったけれども、肩を接するようにして、なにか、大声で、楽しげに笑いさんざめいている。これまで感じたこともない、不可解な嫉妬の感情が、マンの胸いっぱいに溢れた。

(なあんじゃ)

くッ、くッ、と、笑いのような、嗚咽のようなものが、胸の奥底からつきあげて来た。二人の姿が、狐と狸のように見えた。

清冽な流れを、黄昏のうすい光に散らしながら、水車がゆるい速度で廻っている。

それから、数日後、彼女の姿は、この谷底の部落から、消えていた。

明治三十五年、晩秋。

谷口マン、十九歳。

男の出発

「ええ天気じゃのう。お城があんなに、きれいに見えるぞな」

「天気ばかりようても、こっちの方は、大雨、大風、大嵐じゃ」

「そがいに、悪いのかい? 金坊」

「悪いというても、清ちゃんのような鍛冶屋の倅には、わかるまいけんどな。