Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme

Aozora Bunko

「そんなこた、迷信じゃよ。……じゃが、今年は、いろいろ、苦しいことは多かったけど、忘れられん年じゃったなあ。若松に移ったのも今年、玉井組の看板をかけたのも今年、お前とはげしい夫婦喧嘩したのも今年、殺されて生き返ったのも今年、跡継ぎの男の子が生まれたのも、今年、……」

「それから、四円七拾銭もの高い時計を買うたのも、今年」

「明治三十九年――先になってから、記念の年になるなあ」

「先になって? あたしがお婆さんになったとき?」

「おれが爺になったとき。そのときは、この子も大きゅうなっとるぞ。……そうじゃ。勝、という字を入れた名にしてやろ。……勝、勝、……勝、何がええかのう?……」

誕生五日目に、やっと、「勝則」という名が出来た。それを、日本紙に、例の我流の肉太字で書いて神棚の下に貼りつけた。

ところが、困った問題が起こったのである。戸籍がないのであった。金五郎も、マンも、故郷を無断で飛びだしているので、若松に籍がない。早く寄留をしなければと何度か相談はしたのに、そのためには、郷里へ帰るか、手紙で連絡するかしなければならないので、つい、ずるずるになっていた。