Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
呼びとめられた。
遊人風の男である。話があるといわれ、暗い劇場裏につれて行かれた。
眼鏡をかけた、青瓢箪のような、一人の大学生が、待っていた。
「つれて来ましたばい」
という、遊人の報告も待ちきれぬように、慶応大学の徽章をつけた帽子の青年は、
「君かね、僕の女房におちょっかいをかけてる男というのは?」
バネ仕掛で、全身がはずんでいる恰好で、喚きかかって来た。声が妙にかすれている。息がニコチン臭かった。よほどの煙草好きらしく、それまで、指先の黄色くなった手で、短くなった金口の煙草をつまんでいたが、その言葉とともに、遠くへ投げすてた。火がついたままの煙草は、夜の空間に赤い線を引いて、高い赤煉瓦の根の、なにかを積んだもののうえに落ちたようだった。
勝則には、直感的に、この大学生が、光丸の許婚の辻木要之助であることがわかった。返答に窮して、無言でいると、
「君は、玉井組の若親分でしょう?」
いやに叮嚀な、嘲侮するような語調で、亀のように、要之助は首だけ伸ばして来た。
「そうです」
仕方なく、答えた。
「困るなあ、どうも、この若松の者は、柄が悪くて、助平で、油断も隙もならんよ。