Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme

Aozora Bunko

「教えてくれ」

「腕の彫青を、痛む方の頬べんたにこすりつけて――お京、お京、お京。……と、三べん、いうてごらん。じき、疼くのが止まる」

「阿呆なこと、いうな。……さあ、寝ろう」

金五郎は、電燈を消した。拳銃を枕の下に敷いて、蒲団にもぐりこんだ。

(女房の奴、彫青をお京が彫ったこと、とうとう、知ったらしいな……?)

去年の選挙のとき、マンがお京と逢った顛末は、なにも聞いていない。金五郎の方から、聞くのもすこし気味が悪かった。マンは、逢ったことだけは隠さなかったが、内容については一言も語らず、「お父さん、今度、お京さんが来たら、ぜひ、逢うてあげんといけんばい」と、いうばかりだ。きっと、あのとき、お京から、彫青のことを聞いたものにちがいない。しかし、一大決心をしている現在の金五郎にとっては、もはや、そんなことは、どうでもよかった。先刻から、幾本も書いた遺書のなかには、お京宛のも一本ある。

大体、健康な金五郎は、寝つきはすこぶるよい方で、横になったかと思うと、すぐに鼾をかくのが癖であったが、このときも、まもなく、雷のような大鼾が、暁近い空気を震動させて、湧き起った。