Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
かすかに、弱々しい鼓動が打っている。
マンは、薬缶の水をふくむと、兄の顔に、プッと、吹きかけた。林助は、かすかに、眼をひらいた。顔は動かさず、横眼づかいに、じろりと、妹を見た。マンは、ぞっとした。
「兄さん、ねえさんを呼んで来るわ。それまで、死なないで……」
表に、飛びだした。
台所の片隅にある蜜柑箱に、六匹の猫の屍骸が入れてある。あとの二匹は、どこに行ったかわからない。それをちらと見たが、マンは、唇を噛んで、一散に、隔離室の方に、走った。
長屋中は、騒然としている。棺桶をたくさん積んだ車力が、二台、井戸端のところに止まっている。
そこで、玉井金五郎が、なにか、青い腕章をした市役所の役人と、声高に、いい争っていた。
「いやですよ」
と、金五郎は、役人から、握られていた腕を、ふり離した。
五十年配の、胡瓜のような顔に、八字髭を生やした吏員は、横柄に、呶鳴った。
「そんなことをいっては、困るじゃないか。早く、死人を、棺桶に入れろ」
「いやなこと」
「いつまで経ったって、片づきはせん。早くせんと、お前も、コレラにかかって、死んでしまうぞ」
「コレラにかかったって、あんたのいうことは、聞かん。