Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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よしとししゃせいちょう

芳年写生帖

野村 胡堂

Lesen Sie 芳年写生帖 (よしとししゃせいちょう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.626 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

「そう言うけれど、私はつくづくあの人が怖くなることがあるよ」

「あんまり物驚きをする柄では無いようだが、――何が一体怖いんだ」

「あの通り、絵を描くより外に望みの無い人だし、臆病なほど大人しいから、踏台に丁度よかろうと思って連れ添って見ると――」

「――――」

およつはごくりと固唾を呑みました。

「あの通りの良い腕を持ち乍ら、右から左へ金になる、華魁や役者の絵を描くのが大嫌いで、たまたま筆を取るかと思えば、不気味な無慚絵ばかり――、そんなものが金になるわけが無いから、家の中は何時まで経っても火の車さ」

「――――」

「上野の戦さが始まると、その病は嵩じるばかり、毎日目の色を変えて飛出しては、斬り合があった、晒し物があったと、三里も五里も歩き廻って、暗くなってから、狐が落ちたような顔で帰って来るんだもの」

およつはそう話し続け乍ら、何んとなく胴顫いを感ずる様子です。

「私はつくづく愛想を尽き果てたよ。幸い飛込んだお前さんは、私の為には渡りに舟さ、迷惑だろうけれど、何処へなと連れて逃げておくれ、ね欽さん」

「俺もそれを考えないわけじゃ無いが、何んと言っても、まだ探索の目が厳しいから、一と足路地を出たら、どんな事になるか解ったものじゃない。