Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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よしとししゃせいちょう

芳年写生帖

野村 胡堂

Lesen Sie 芳年写生帖 (よしとししゃせいちょう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.626 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

落武者欽之丞

「さア」

促されて芳年は起ち上りましたが、意気地無くも膝の蝶番が崩れて、ヘタヘタと綿のように泥濘へ坐ってしまいます。

「た、起てません」

「ハッハッ、馬鹿な奴だ。腰が抜けたのか、そんな事で本当の戦が描けるものか」

「少し気を落付けさせて下さい、直ぐ治ります」

「よしよし、何時までも腰抜の相手になっても居られまい。誰か二人ばかり、此辺で見張って居るが宜い、我々はもう一度落武者を狩り出して来よう」

芳年は腰の抜けたまま、松の根方に縛り付けられ、官兵二人はそれを見張るともなく残されました。

あとの一隊はバラバラと上野の森へ、暮れ残る道を取って返します。

落武者欽之丞

「やい、絵師」

「ヘエ――」

「俺を描いて見ろ」

「ヘエ――」

「この武者振りを一つ描いて見ろ、出来が良かったら、国への土産にしてやる」

一人の官兵は威儀を作りました。

「縛られて居ちゃ描けません」

芳年は泣き出しそうでした。

「よしよし、それじゃ暫らくの間縄を解いてやる。その代り絵の出来が悪いと勘弁しないぞ」

「それじゃ御免蒙ります」

「何?」

「出来不出来は臨本次第で、一たん筆を執った上は、私の儘にもなりません」

「俺の武者振りが悪いというのか」