Japanische Klassiker mit Furigana
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よしとししゃせいちょう
芳年写生帖
野村 胡堂
Lesen Sie 芳年写生帖 (よしとししゃせいちょう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.626 Zeichen · 26 Bildschirme
描き出す怨女の悪相
この顔を、この姿を、――お前の筆で描けるものなら描いておくれ」
宙に泳ぐ手、銀杏返しの根はガックリ抜けて、血潮の網目を引いた拳に、黒髪がバラリと絡みます。
女の顔は、美しいだけに凄まじいものでした。引釣る眉、ギラギラと死の苦痛を映す瞳、血みどろの頬も唇も痙撃して、綺麗な歯並が、締木にかけたようにギリギリと鳴ります。
「この顔を見て、お前が夜寝られるか寝られないか、――よく見ておくれ。欽さんを訴人した上に、この私まで、――手に掛けなくても、なぶり殺しにしたお前だ――」
「待て、言うことがある。何も彼も間違いだらけだ、――あれ、あれを聴け」
芳年は血に狂う手負いのおよつを辛くも抱き止めて、二軒長屋の隣家――お浜の家のたたずまいを指します。
生垣一つを隔てて、明けっ放した庭先の夕陽に、何も彼も手に取るよう。この時お浜の家には、隊長に従って官兵が七八人、ドカドカと入って来たのでした。
描き出す怨女の悪相
「日下部欽之丞を訴人した、浜というのは其方か。女乍ら、賊軍の大物を討たせた手柄は抜群だ。追って褒美の御沙汰はある筈だが、取あえずお上のお言葉だけを伝えて置く」
そう言う官兵の隊長の声が、近所合壁へも聞えよがしに、凜々と響き渡るのです。