Japanische Klassiker mit Furigana
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いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Lesen Sie 銀座復興 他三篇 (いさん) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.579 Zeichen · 82 Bildschirme
」
あっちこっち、見知越の顔を見付けては、ひそひそ話をしていたじいやが、相談するように一郎の顔をのぞき込んだ。
「駄目だよ。もう、うちの近所は海になってるだろう。」
俄に悲しさに堪えられなくなった声が著しく震えた。
「なあに海はえらく引いてるそうです。二里も三里も干潟になったって云ってます。」
「引いてるって。それじゃあ海嘯は来なかったのかい。」
「来たには来たけれど、直きに引いてしまったそうです。一寸行って見て参りましょう。」
悟り切った顔をしているじいやは、いい捨てて歩き出した。
「待ってくれ。僕も一緒に行こう。」
非常な決心を示した態度で一郎は立上った。
「およしなさいまし。まだぐらぐら揺れてますから。」
ばあやがあわてて引止めた。
「なあに、じいやが行ける所なら僕だって行けるよ。」
「それじゃあ僕も行こう。」
澤も、自分一人安全地に残っているのは心がとがめるので、直ぐに一郎と肩を並べて歩き出した。
「直ぐ帰って来る。大丈夫だ。もう大きいやつは来やあしない。」
男達がみんな行ってしまうのだと思うと心細くなって、甲子の泣声が又高くなった。
松林を出ると、先刻上って来た一筋の坂が、見るかげもなくなった長谷の町へ真直ぐに続いている。