Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こうやひじり

高野聖

泉 鏡花

Lesen Sie 高野聖 (こうやひじり) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.025 Zeichen · 71 Bildschirme

Aozora Bunko

九

」

九

「およそ人間が滅びるのは、地球の薄皮が破れて空から火が降るのでもなければ、大海が押被さるのでもない、飛騨国の樹林が蛭になるのが最初で、しまいには皆血と泥の中に筋の黒い虫が泳ぐ、それが代がわりの世界であろうと、ぼんやり。

なるほどこの森も入口では何の事もなかったのに、中へ来るとこの通り、もっと奥深く進んだら早や残らず立樹の根の方から朽ちて山蛭になっていよう、助かるまい、ここで取殺される因縁らしい、取留めのない考えが浮んだのも人が知死期に近いたからだとふと気が付いた。

どの道死ぬるものなら一足でも前へ進んで、世間の者が夢にも知らぬ血と泥の大沼の片端でも見ておこうと、そう覚悟がきまっては気味の悪いも何もあったものじゃない、体中珠数生になったのを手当次第に掻い除けり棄て、抜き取りなどして、手を挙げ足を踏んで、まるで躍り狂う形で歩行き出した。

はじめの中は一廻も太ったように思われて痒さが耐らなかったが、しまいにはげっそり痩せたと感じられてずきずき痛んでならぬ、その上を容赦なく歩行く内にも入交りに襲いおった。

既に目も眩んで倒れそうになると、禍はこの辺が絶頂であったと見えて、隧道を抜けたように、遥に一輪のかすれた月を拝んだのは、蛭の林の出口なので。