Japanische Klassiker mit Furigana
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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
Lesen Sie 魔術師 (まじゅつし) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 139.264 Zeichen · 280 Bildschirme
五色の雪
五色の雪
明智の立場は苦しかった。非常な苦労をして死を装い、折角爺やに化けて玉村邸内に入込んでいたのを、心なき二郎青年の失策から、賊の前に正体を曝さねばならぬこととなり、しかも、その大犠牲を払って追跡した賊には、まんまと一杯喰わされてしまったのだ。周囲の人々、引いては世間に対する不面目は姑く別にしても、彼の自尊心がこの恥辱に耐え得なかった。こうなっては、もうどんなことがあっても、賊の巣窟をつきとめないでは我慢が出来ぬ。前後の利害を打算している暇はないのだ。彼は木戸口の所に黙然と佇んだまま、全気力を頭脳に集中した。全く不可能な事柄を、為しとげなければならぬのだ。あれ程探して分らぬ賊の行衛を、今直ちにつきとめようというのだ。
彼は嘗つて怪汽船の密室で、身動きもならぬ繩目を受け、怪賊の為にあわや毒薬を注射されようとした、あの危急な場合を想起していた。その時彼を救ってくれたのは、当の怪賊の娘文代だった。全くあり得ないことが起ったのだ。
だが、あの時、彼は五官以外の感覚で、それを予期していた。少しも絶望を感じなかった。今夜も同じ不思議な感覚がある。心の隅を名状し難い微妙な何者かが擽っている。