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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

まじめなのは黙蛙堂、猫間川の近くに住んでいる彫刻師だが、遊蕩家の狂風が、今頃からあんなほうへ帰ると辻斬りに逢うぞ、おれと一緒に来たまえ――と誘惑するのをていねいに断って、家内がやかましゅうございますから、とお先にスタスタと失礼して行った。

「あんなのはないね」

と狂風は面白がった。

高津の宮の鳥居を出ると、坂下に、駕鉄という油障子が灯っている。もう自分だけ浮かれ機嫌になっている狂風が、

「三挺! 三挺!」

と叩き起こした。

「駕ですか。駕ですか」

と、わらじばきのまま、うたた寝をしていた駕かきが、土間の葭簀をめくって飛びだしてくると、

「舟はあるまい」

と、またからかった。

「どちらへ」

「三人別々だよ」

源内は貰ってきた芍薬のきり花を駕の屋根へ乗せて、

「わしは、九条村へやって貰う」

糸しんの蝋燭が、駕の棒鼻へブラさがると、三ツの提灯が黄色い明りを浮かして、一、二町ほどひとつ道を流れだしたが、そのうちに、四ツ辻から、三方へ別れ別れになって行く。

夜更けの駕ほど快いものはない。

雑音もなく埃も立たない大通りを、揺られながらウットリともたれて、ズンズン流れてゆく地の上を細目に見ていると、駕屋の足音も一種の諧調をもって気持よく聞こえる。