Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
ええ、押ッ放してやるのではなかったのに」
「では、追いかけて、貴公も一緒に、お米とやらいう女を、捕まえてやるがよかろう。さすれば義理にも宅助が帰って来る」
「ばかなことを言いたまえッ、女情におぼれている啓之助の妾などを、誰が仲間と一緒になって、この昼日中、両刀を差すものが追い廻していられるものか」
「あははははは。面白い、また一角が怒った」
とお十夜は哄笑して、なお気にして遠眼鏡を覗いていたが、
「ふーむ、なかなかいい女だ。一角がそういうなら、おれが様子を見に行ってやるから、しばらく、向うの絵馬堂で待っていねえ」
と、雪踏をすって、石段を下りはじめた。
辻堂があった。
白藤の花がこぼれている。
野中の観音へゆく道のほとり。このあたりに多いのは、池と藪と桃畑、でなければ墓場である。
だが、夏もやがて近い真昼中、朗明であって陰湿がない。どこかで石屋の鑿の音がする、かッたるそうに刻んでいた。
お米はそこで日傘をつぼめた。ちょっと、辻堂を拝借する。辻堂というものは、いかめしい宮の拝殿などより、何かしら親しみ深いものがある。ことに、そのいぶせき縁の端は、疲れた足にすがられ、家なき子に夜をしのがせ、行旅病者の寝床とまでなる。