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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

ながら遅歩をすすませている。

きょう偶然に会ったことはうれしかったが、それは、悲恋の幻滅を知る日であったか、とお米は相手の冷やかさに血を熱くして、

「弦之丞様、今申した私の願いは、おききなさって下さるのですか、それともお嫌とおっしゃるのでございますか。これ程までせつない苦労をしても、それがあなたのお心に通じないものなら、いッそもう私は……」

「何をなさる」

ふりかえるとともに、弦之丞はお米の手くびを握って、固く脇の下へ抱えてしまった。

その指からポロリと匕首が落されて、松落葉の土へ刺さったのを、お米はまた拾い取ろうとしてもだえながら、

「死んだがましでございます、私は死ぬよりほかにない女です」

弦之丞は女の激しいふるえを感じながら、黙ってお米の手を抱えていた。その肉感的な痙攣を感じた当惑のきわみに、かれはまだお千絵にもお綱にも持ったことのない悪魔的な考えにフト頭を濁していた。

この女の猥らな恋を利用してやろうか。

かれの切れ長な目が、そう思いながらジッと見ると、お米は温かい男の腕の下に自分の手を預けたまま、なんの反抗力も失ってしまった。気味の悪いほど白く透く肌の下には、きわどい瞬間を楽しもうとする血がよろこび躍っている。