Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
そこでおはもじながらと来やがった。かえすがえすもとおいでなすった。逃げた女の出来合文句よ、あっちへ行って肘をくったから、こっちへコロコロ戻りますなんて、そうは問屋でおろさねえ」
と宅助のひとりごと、いつか森啓之助にのり移って、自分が旦那の腹になっている。
「断られるにゃきまっていら。法月弦之丞は今そんなことをしていられる場合じゃねえ。いや、弦之丞も人間だから、そりゃ、大望の途中にだって、痴話や口説もやるだろうが、お綱という女がついている。ははあ、それでお米も目がさめたんだな。そうだ、そうに違えねえ。うむ、まだ、何か泣き言が並べてあるな。なんだって、……死ぬ、おや、死……」
手紙にしがみついて、終りの二、三行を幾度もくり返した。
旦那様へのお詫びに死ぬ――と書いてあるように読める。墨がかすれていて読みにくい、おまけに最後の折目からサラサラと少しばかりの髪の毛が落ちてきた。
「おや、いけねえ」
宅助は少し寒くなった。
「遺物まで入っていやがる。死なれちゃ玉なしだ」
それをふところにねじこんで、門番の伊平の所へ駈けてきた。この手紙を持ってきた使屋は? と聞くと、返事はいらないといって、すぐに帰ってしまったという。