Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「おい、どうだ」
「ウウム……」
袖を引きあって、お綱の顔を睨んでいる。
「シッ……」と左右へ辷ると二人とも、あり合う苫を頭からかぶって、船床の上へ寝てしまった。
かかるまにも、竹屋三位卿そのほかの乗っている追手の船は、滔天の飛沫をついてこの船を追っている。
不意にボウと月光がさした。
鯖の背みたいな青黒い海の色が、一瞬、ものすごく目に映ったかと思うと、バラバラッと、痛いような大粒の雨!
嵐の先駆――。
気味のわるい微風が撫でた。
ほんの一瞬、欺すようにさした月光は、空の怒ろうとする前に見せる微笑であった。
「あ……アア……」
と、お綱は帆ばしらの根を離れ得ずに、冷たくなった額をおさえた。
「どうした?」
と、抱きこむように支えて、
「暈ったのか」と弦之丞が優しく訊く。
「エ、すこウし……」
「しっかりいたせ、夜明けになれば凪ぎるであろう」
「はい……お案じ下さいますな」
「よいか」
「大丈夫でございます」
「前の所へ戻って、少し落ちつくがよい」
「そういたします」
「わしの帯につかまって……よいか……足をすくわれるな、足を」
お綱は弦之丞に力とすがった。
弦之丞はお綱を抱いた。