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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

しばらくすると、枯れ杉と榧の枝をつかんで戻ってきた。そして、所を見計らって、その榧の木をプスプスと煤しはじめる。

お綱の眠りつけないでいる様子をみて、蚊や毒虫を追ってやろうとする、弦之丞の心づかいであった。うすくまつわう煙の情けが、お綱の身を和らかに巻く。

ようやく、虫の責め苦からのがれた。

だが、お綱はまだ眠れなかった。

「弦之丞様、まだ夜明けには間がありましょうか」

「そちは少しも寝ないようだが」

「なんとなく気が冴えて」

「それはいけない」

「でも、ゆうべあの森で、だいぶよく眠りましたから」

いっそ夜の明けるまで語り明かしたいとお綱は思った。弦之丞も眠られぬまま、つい答え、つい話頭を向ける気持になる。

万吉はどうしているだろうか? 常木鴻山もさだめし消息を案じているだろう? 松平左京之介様は、自分たちの吉左右を、首を長くして待っているに違いない。

そんな話。

そんな話からお綱は、お千絵様は――といって弦之丞の顔色を見た。

かれは、それなり黙然としてしまった。

お綱は自分のつつしみを破って、ふと弦之丞を憂暗にさせたことをすまなく思った。もとより、この人とお千絵様とは、切る、捨てる、ことのならない仲なのである。