Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
血筆隠密書
アッ――と不意をうたれて、お綱が方丈の外へ退くとたんに、安井同心はピシリッと白木の杖で腹を打たれた。眠っているように見えた弦之丞が、咄嗟、そこを支えたのである。
「ウム!」と気丈な安井同心、杖をつかんで奪おうと試みた。
白刃を仕込んだ杖! 相手につかませておいて、弦之丞、合口に掛けていた指を弾くように開いた。
と杖はそこから二ツに別れて、アッというと民右衛門、鞘だけ持ってよろよろと後ろへ。
そこを真っ向胸落し! 切ッ尖はなお余って、膝行袴の前まで裂いた。たじろぐ隙に、弦之丞は、死骸のつかんでいる鞘をとり、それを下段に、白刃を片手上段に持って、四、五たび廃寺の廊下を駆け廻っていたが、やがて、お綱の姿をチラと見て、庫裏の裏手へ飛び下り、大竹藪の深い闇へ、ふと、影をくらましてしまった。
血筆隠密書
間者牢の柵外に、山番が焼飯の糧をおいてゆくのを取りに出る時と、渓流へ口をそそぎにゆく時のほかは、洞窟の奥に陽のめも見ず、精と根を秘帖にそそいで、ここに百四十日あまり、血筆をとって岩磐の火皿にかがまったきりであった甲賀世阿弥も、今はようやく疲れてきた。
疲れてふと洞窟の床へ身を投げて臥すと、昏々として二日もさめないことがある。