Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
かれには、捕手も同心もない。ただあるのは、目指す剣山の山牢があるばかりだ。
けれど、貞光口から難なくここへ来た三位卿の一行と、道なき裏山の、それも山番の目を忍び忍びくる彼とは、時間にして半日、嶮路の不利にしてだいぶな差がある。
ただ、僥倖というべきことは、深更に十手の襲うところとなったため、勢い、あのまま暁へかけて、道を急ぎにかかったであろうと察しられる一点。
そうすると、麓の見付役所で、山嵐の寝心地よく、遅くまで、熟睡してここへ着いたお十夜などよりは、ゆうに半日以上の早駈けとなり、時間の差だけは取り返して余りがある。
かれの消息については、漠然として疑惧をもっただけで、徳島の城下を離れてきた有村や三人組、もとより間髪の差で、ここへ弦之丞とお綱がくるとは夢にも知らない。
急ぐうちにもどこか悠々として柵を越える場所を見廻してくると、やがて面前に見た急坂の上から、早足に駆け下りてきた人物があった。
四人が姿を隠したと知らずに、そこへ駆け下りてきた男、日除笠をおさえて、大股にゆくところを、いきなり跳びついたお十夜が、どこをすくったか、気味よく投げた。
「あっ!」