Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

「ウーム、見えない」

「さてはほかへ隠れおったな」

「隠れたって、間者牢の柵、あれより外へは出られねえものを」

「こんな中に生きていても、やはり生命は惜しいものとみえる。出よう、外へ」

手探りで後戻りをしはじめたが天堂一角、またひょいと気がついたように、

「どこぞ横穴へでもへばりついているようなことはあるまいな」

「いや、そんな隠れ場所はねえようだが……」

と答えながら、お十夜は後ろを眺めなおした。

しかし、なくはなかった。

よくよく闇に眼を馴らしていると、妙な所が一ヵ所ある。

どんづまりの真ッ暗な岩壁が、右側へ少し窪みこんでいるらしい。その袋穴の漆壺みたいな狭い所に、人の眼らしいものがギラリと光っている。動かずに光っている。そして、孫兵衛を睨みつけている。

けれど、にわかにそれが人の眼だとは断定されない。なにしろそれ以外には何も見えないのである。で――孫兵衛は抜刀を後ろ廻しにひそめたまま、屈身を伸ばして、ジッと自分の息を殺した。すると、向うの呼吸が感じられた。世阿弥はやはりそこにじっとしていたのだ。

一角は、孫兵衛の最初にいないといったのを信じて、気早に外へ這い出していた。