Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「ふーん、すくみこんでいるな」と感づいたけれど、お十夜は、あえて助勢を呼ぼうとは思わない。
十年以上、日蔭干しになっている死にぞこない、そぼろ助広で一突きに抉るくらいはなんの造作もないこと。そう思っている。
しかし暗い、どんな得物を持って、どう構えているか見当がつかない。窮鼠猫を噛むということも一応思ってみる必要がある。ちょっと暗闇に眸が馴れてこないうちは迂濶に飛びかかれぬ気もした。
すると不意に、岩壁の窪みへじっとしたまま、目無魚のごとく動かずにいた甲賀世阿弥が、
「おおう! ……」と、不意に、太い息をもらして、さらにまた低く、
「オウ……」と驚いたような声を繰り返した。
この暗所に棲みなれている世阿弥の眸は、自然生理的に、闇の中でも見とおしが利く筈だが、お十夜には、皆目、対手の見当がつかない。ただ、爛と射る双つの眼を感じるばかりだ。
「狂いだすな、こいつア。よし、そのほうが始末がいい」と、かれは世阿弥が呻いたのを、恐怖のあまりだと思って、爪を立って来る猛獣を待つくらいな覚悟をもった。
だが、相手は身ゆるぎもしないで、
「そこへまいったのは、川島郷に棲んでいた原士、関屋孫兵衛に相違ないと思うがどうだ」