Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「そうか」と、老人は杖を止めた。
「――ご苦労だった、これから先はひとりでよろしい、お前たちは帰ってくれ」
「しかし、もう少々先まで」
「懸念には及ばんよ」
「危ぶむわけではございませんが、お差しつかえなければ、せめて、弦之丞の姿を見つけるまでも」
「いや、かえって邪魔だよ」
手を振って、独り先へ歩きだしたが、一、二丁足を進めるごとに、杖を立て、間者牢の山をふり仰いでいた。
老人のうしろ影を見送って、旅川周馬は、
「なるほど剛腹なおじいさんだ」
と、舌をまいて、
「なあお十夜」
「ウム?」
「深夜しかもこの深岳だ、弦之丞のやつは山にこもって、血に狂したやぶれかぶれ、人と見たら盲目に斬りつけるだろう。とても、吾々にもあんな勇気はないよ」
「そうさ、困った老人だて……」
何が困るのか、孫兵衛の返辞はすこし意味をちがえて、
「あの分じゃ、どうも当分は死にそうもねえ」
と、頭巾の重さをふと気にしていた。
そんなことをいって、ただひとり間者牢へのぼって行った影が、うすい夜霧にボケるまで、一同見送ってはいたが、誰も、
「あの老人が、血刀を下げた白衣の影にパッタリ行き会ったらどうする気だろう?」