Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「――たいそう威張っていたようだけれど、脆いねエ……もう薬が廻ったのかい」
「な……なんだと」
無理に、起き上がろうとした宅助は、かえって、ウームと呻いたまま、苦しそうにのた打った。
「付人のお前が、そんな意気地なしじゃお困りだね。ずいぶんお前も執念強く、私を逃がすまいとしていたようだけれど、今日のお酒はちっとばかり、悪い薬がまじったとは、さすがにその浄玻璃の目玉でも見えなかったとみえる」
「うッ……うぬ、ど、毒を?」
「なあに、そう心配おしでない、持ちあわせの鼠薬、それもホンの小指の先で、お銚子の口へつけたくらいだから、まさか、そのずう体の命を奪るほど廻りはしまい。……だが、思えば私という女も、すごい腕になりました。これもみんな、お前や、啓之助が私に度胸をつけてくれたお仕込みだよ。阿波へ帰ったら、あの男に、くれぐれよろしくいっておくれネ」
「ウーム……ちッ畜生」
「口惜しそうだね、ホ、ホ、ホ。苦しいかエ。私が長持へ押しこめられて、阿波へやられた時も、ちょうどそんな苦しみさ。毒でも飲んで、いっそ死のうとしたことが、幾度だったかしれやあしない。――だけれど、死んで花が咲かないよりは、恋しい、恋しい、あるお方に、会われないのが心残りで、ツイのまずにいた毒薬を、フイと昨夜思いだして、少しばかりお前に試してみたわけさ。