Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
渦と渦と渦
ていた。
渦と渦と渦
網雪洞にほの暗く照らされた本丸から二の丸への廻廊を、何か、あわただしい声と跫音とがなだれてくる。
「お退りなさい」
「お退りなさい!」
徳島城の奥用人たちは、手をひろげて、ひとりの興奮した老人を、廊下へ押し出してくるのであった。
「殿様は、ただならぬお怒りですぞ」
「お目どおりはならんという御諚!」
「お沙汰をお待ちなさい!」
最前までこの城中も、奥は夜宴に、お表は賜酒の無礼講で、たいそう平和であったのが、この老人ひとりの言葉から、たちまち、凄愴な気が城内にみなぎってしまった。
「邪魔をするなッ」
龍耳老人は額に太い筋を立てていた。
「わしは原士の長、郷高取謁見格、お前たちが退れの、下におれのというのは僭越じゃ。殿様にもう一言いわねばならぬことがある、離せ」
「いや、上意です」
「かまわん! 御立腹をおそれて諫言はできぬ、御当家のために、わしはあえて非礼をするのだ、殿様がまた、病床に臥すまでやッつけてやる」
「なんとおっしゃろうが、お目通りはかないませぬ。老人! あなたも少々気がたかぶっておいでられる」
「ばかな」
「とにかく、お表の間へ退って、ご休息をなさるがよろしい」