Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
すると、馬蹄をかわしてふりかえったひとりの影、そのまま、ムチを持ちなおして急ごうとする有村の鞍つぼへ飛びかかってきた。
「孫兵衛ではないか」
と、馬上からだしぬけにいわれて、
「お? ……」
と、一方は、暗闇を探るような眼。
あぶなく、悍馬に蹴られるところであった人影は、城下から一散に旅川周馬を追ッかけてきた、お十夜であった。
「どこへゆく? 孫兵衛」
「あ、三位卿。あなたはどこへ?」
「孫兵衛! 実にしまったことが起こった」
有村は気が急いているので、口輪に泡をかませながら馬をグルグル廻していた。
「えっ、何か?」
「されば! 味方の内に思わぬ異端者があって、大事はついにくつがえされたぞ」
「周馬でござろう! 裏切者は」
「イや、原士の長だ」
「えッ、龍耳老人?」
「法月弦之丞を討ったといつわり実は剣山から逃がしおった! あの、お綱という女までも」
と、手綱に口惜しさをふるわせる。
「じゃアあの時……ウーム……」
と呻いたまま、孫兵衛も茫然。
落寞たる夜風がふたりを払ってゆく。
「ちぇッ、いまいましいおやじ」と、孫兵衛は歯ぎしりをかみ鳴らした。
「そして、どういうことになったんで」