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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

ふところの体熱は、今、しっかりと幸福の卵をだいて孵している! かれはそう思って、また微笑を禁じ得なかった。

「天堂一角もお十夜も、おれから見れば善人だよ」

周馬はひとりで空うそぶいた。

「いや、世の中自体が甘えもンだ。これでおれが帰府すれば、幕府のやつらは驚嘆して、旅川周馬様の隠密術に礼拝するぜ。お上は御加増、御賞辞とくる。駿河台の世阿弥のあとに宅地をたまわり、栄光一身にあつまってくるンだからありがたい、滑稽だな、皮肉なもんだな、運というサイコロは」

――なんだか彼はおかしさがこみ上げてきた。

「ちょっとした頭の働き――下手か上手かの違いで、骨を折ってヘタばる奴と、楽をしてうまい汁を吸う者とができる。まあよかったよ! これでお千絵様の方さえ首尾よく運んでくれれば、万事上々吉。申し分のないところだが……」

つぶやきながら、そこを立った。

捕手の網も、もうだいぶゆるんでいるとは思ったが、大事をとって忍び忍び潮明寺の門を出ようとすると、

「あっ? ……」

出会いがしら?

ひとりの虚無僧が、ちょうど今、門を入ってこようとした。そして、周馬の姿を見つけたとたんに、飛鳥のごとく後へ戻って、闇へ低く――