Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
「そんな訳ではございませぬ。まったく、お吉の知らないことでございますから」
「いいよ、いいよ……」
また、理由のない駄々をこねて、人困らせをするのかと、お吉がよい程に扱っていると、すねて後ろ向きになったお米の目に、涙がいっぱいに溜っている。
「お嬢さん」
肩へ手をかけると振り落して、
「いいよ、もうお前に、私の身のことは、相談もしなければ、頼みもしないから……」
「まあ、何をおっしゃるやら、お吉には、よくわけが分りませぬ」
「分っていても、教えてはくれないじゃないか」
「じゃ、その弦之丞様とやらに、いったいお嬢さんは、どういう用があるんですえ」
「用ということもないけれど、私はどうしても、あのお方に、もう一度お目にかからなければならないんだよ。――それで、その一心で阿波から逃げてきたのじゃあないか」
「じゃ、お嬢さんは、その人に? ……」
今はお吉にも、お米の本心のあるところが、よく分った。
それにつけても、癆咳という病気があるため、わがまま気随にしておいたのが悪かった、と涙まじりに悔いていた、お米の母の言葉が思い起こされて、お吉は、溜息をついて、その人の姿を眺めた。