Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
その白い埃が沈むのを待って、
「阿波へお渡りなさろうとは、何ぞよほどな御事情でござりますか。ご存じの通り、御領地堺は、関のお検めがきびしい国で、めったな者は、みんな船から突っ返されます」
「さ、その禁制を知っておりますゆえ、四国屋様のお情けで、積荷の中へでも、隠していただきたい、と思いまして」
「では、お役人の目をぬすんで」
「ごく内密に、渡りたいのでございます」
「さあ? ……」
にわかに暗い顔をして、お久良は、当惑そうに、胸へ手を差し入れたまま、しばらく、立ち思案に暮れてしまう。
後ろにいた手代の新吉は、心配そうに、主人の袖へ合図を与えた。秘密に渡海する者を商船に乗せて、それが発覚したとなれば、いうまでもなく、四国屋の身代は、根こそぎから闕所になる。木曾街道での恩はあるが、そんなあぶない頼みは引きうけないほうがようございます――というふうにかれの手が知らせていた。
「どうでございましょう。四国屋様」
「…………」
お久良は、まだ黙然と、迷っていた。
和らかな微風が、堤の緑を撫でてゆく。
「嫌といわば? ――」
すでに、秘密の一端をもらした以上、不愍ではあるが、お久良と新吉とを、このまま放してやることはなるまい――と、法月弦之丞の眸は、いつのまにか、炯として、一脈の凄味を帯び、お久良の返辞を、待たぬふうに待ちすまし