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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

あなたはお武家、大番組の御子息様、私の前身は、あられもない女掏摸。それだけでも、きっと、お嫌なのは分っております。けれど、お綱は、あなたがなくては、生きておられぬ女なのでございます」

「――その心もちは――」

と、かすかにいって、弦之丞は、眼がしらの露を払った。

「お分りなされて下さいましたか」

「――分ってはいるが……ああ」

いかにも苦痛な一句。無表情にみえる姿、冷徹にみえる眸、その奥には、麻のごとく、かき乱れているものがある。でなければ、なんで弦之丞の睫毛にあの涙がういてこよう。

かれも、お綱の心情を、よく知っていたのではあるまいか。しかし、江戸表には、いちど誓った愛人のお千絵が残っている。弦之丞としては、そのお千絵をまだまったくの廃人とは思っていない。いや、狂気して、ふたたび癒えぬ人であればある程、それを昨日の人にして、お綱の恋を、今すぐにうけいれる気にはなれないであろう。

「では……」と、息の弾むのを隠して、お綱は弦之丞の側へヒタと寄りついた。もう、羞恥というようなものを超えた懸命である。

「――あなたを思い詰めている私の心、それは、わかっていると、おっしゃるのでございますか」