Japanische Klassiker mit Furigana
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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Lesen Sie あさひの鎧 (あさひのよろい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 239.520 Zeichen · 475 Bildschirme
乳房をさがし出して吸ったのであったが、死人から乳は出なかった。乳房にも血汐は流れ寄って来ていた。その血が口へはいったらしい。で、嬰児は泣き出したのであった。
「可哀そうに」
と早瀬は云った。
嬰児を膝へ抱き上げた。
母の死骸から流された血で、顔を染め指を染めたその嬰児は、抱き上げられて泣くのを止め、布の裾から顔を覗かせ、早瀬を見上げて無心に笑った。
(わたしこの児を見殺しには出来ない)
早瀬は烈しくそう思った。
殺されている狂人の女乞食が云った、さっきの言葉が思い出された。
――その盲目の殺人狂に、この児を見せてやろう抱かせてやろう、そうしたらその男も仏心を起こして、殺生の真似などしないだろうと、……そういう意味のことを云ったその言葉を!
(気の毒な殺された女の人の代わりに、わたしがこの児をその殺人狂に、抱かせてやろう、そうだ抱かせて!)
その男に対する憎悪の念が、早瀬の心に涌いて来た。
「悪人! ……鬼! ……無慈悲な悪魔! ……罪もないこの児の母親を殺し、無邪気なこの児を孤児などにして! ……」
この時早瀬の懐中から、銭形模様の艶のある紐が、五寸あまり延びて出た。