Japanische Klassiker mit Furigana
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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Lesen Sie あさひの鎧 (あさひのよろい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 239.520 Zeichen · 475 Bildschirme
万里小路中納言藤房卿が、数年前に建てた館で、山屋敷の一つであったが、この裏山が魑魅魍魎――流浪人や猟師や山賊や乞食、そういうものの巣窟となって美しい風景を穢し出して以来、すっかり見すてて手入れもせず、まして住もうともしなかった館で、狐狸など住んでいないだろうかと、そんなにまでも案じられるほどに、それは荒れはてているのであった。
でも今夜はどうしたことか、そこに燈の光がともっていた。
廻廊ごしに山の景色の見える、古びてはいるが高雅な部屋に、几帳を横にし経机に倚り、短檠の光幽かな中で、飛天夜叉の桂子が、観音経を書写していた。
廻廊のあなた前庭の一所、楓の老木の根もとにあたって、雪白の物がかしこまっていた。五尺にもあまる白猩々であった。
それも桂子には気にかかっていたが、遥か向こうの山の中腹に、木の間がくれに一点の火の光が動かずにともっていることが、いっそう桂子には気にかかっていた。
写経の桂子
(あれは無人の猪小屋の筈だが)
そう、火の光の見えている、山の中腹のその一所には、昨日まで一人の住人のなかった、ほとんど壊れた猪小屋が――猟師が鳥獣を待ち射つため、荒々しく作った三間ばかりの小屋が、寂しく立っていた筈であった。