Japanische Klassiker mit Furigana
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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Lesen Sie あさひの鎧 (あさひのよろい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 239.520 Zeichen · 475 Bildschirme
「飛天夜叉様がお泣きになるとは!」
不意に右衛門は足を止め、大鉞を地へ突き立て、その柄頭へ両手をのせ、その甲の上へ額をあてた。
肩がこまかく顫え出した。
忠実な朴訥な老いた僕は、女主人の心を推量り、忍びやかに自分も泣き出したのである。
雁の啼き声が聞こえて来た。
月の下辺を、矩形をなして、渡っているその鳥の姿も見えた。
「殺す!」
と烈しく声に出して云い、右衛門は鎌首のように首をもたげた。
「みんな小次郎のさせる業だ! 今夜こそ小次郎を殺してやる!」
裏庭に面している部屋の中に、小次郎と浮藻とが坐っていた。
窶れた顔へ涙をかけ、それを細めた燈火に照らし、浮藻は小次郎へ縋るようにしていた。
「小次郎様、参りましょうよ」
浮藻の声は咽んでいた。
「どこの山の奥へなりと、どこの海の果てへなりと、二人で参ってくらしましょうよ」
「…………」
黙ってうつ向いて唇を噛んでいる、蒼白の顔の小次郎も、体は痩せて窶れていた。
小次郎は思っているのであった。
(そうだ、二人は行った方がよい。この館を出た方がよい。……桂子のためでもあれば、浮藻や自分のためでもある)と。
小次郎を獲ようと焦心しながら、妹の心を思いやって、さし控えている飛天夜叉の桂子。