Japanische Klassiker mit Furigana
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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Lesen Sie あさひの鎧 (あさひのよろい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 239.520 Zeichen · 475 Bildschirme
で、暗い巷には、それらしい人影は見られなかった。
「小次郎」
と頼春は怪訝そうに云った。
「お前いま何んとか云ったか?」
「はい、兄上と申しました」
「そうではない、それ以外に……」
「いえ、なんとも申しません」
「お前に何か聞こえなかったか?」
「さあ、遠くで鶏の声が……」
「いやいや嗄れた女の声じゃ」
「聞こえませんでございますな」
「頼春殿、それがよろしいと……たしかに、このように聞こえたが……」
するとこの時同じ声が、どこからともなく聞こえて来た。
「武士は武家方へつくものじゃ、宮方へつくのはかえって不忠。……武家方に返り忠なさりませ」
「小次郎」
と頼春は顫えを帯びた声で云った。
「聞こえたであろう、あれじゃあれじゃ!」
「変ですなあ」
と小次郎は云った。
「私には何んにも聞こえませんが」
そう、小次郎には遥かの方角から、鶏の声が幽かに聞こえ、近くの小路で蔀を上げるらしい、軋り音が聞こえたばかりであって、そんな嗄れた女の声など、全然聞こえては来ないのであった。
「そうか」
と頼春は腑に落ちないように云った。
「ではわしの空耳かもしれぬ。……行こう」
と二人は歩き出した。