Japanische Klassiker mit Furigana
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おちょうふじん
お蝶夫人
三浦 環
Lesen Sie お蝶夫人 (おちょうふじん) von 三浦 環 (みうらたまき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 123.730 Zeichen · 242 Bildschirme
男につれられ、リリー(愛猫)を籠に入れてこの家に疎開して来た。その時母は八十七歳であった。
「まあママちゃんよかったこと、こっちは東京のように、空の敵におそれる必要がないのですもの」
と私がいえば、
「まあなんという田舎なの、汽車にトンネルが三十二あった」
と不平たらだらで母は家に入った。
昭和十九年は我国のため、悲しい思い出をのこした。ガダルカナル及びアッツ島の敗戦、サイパン島における全員戦死、住民婦女子まで自決をとげた。私はこの疎開地でサイパンの悲報を聞きて胸つまり、声が出なくなって、如何にしても常に自信のあったピアニシモが出来なくなって一夜泣き明かしたが、これでは自分自身まで敵にやられたと同じと思って、一生懸命に練習して遂にまたピアニシモの声を美しく出すことが出来て、先ず胸をなでおろした。
母は健康で、つやつやとした顔で、小巾切れで紐など作って、また愛らしい袋も作って村の子女たちに与えた。
秋の末に、鴬の声も聞こえず、富士颪の風が強いので、西片の家のまわりに草の垣根を作らせた。毎年冬になれば風邪で入院する母の身の上に、この土地の寒さがこたえやしまいかと、私はとても心配していたが、十二月十二日までとても元気で、食物も沢山食し、愛猫リリーに何かと世話をやく母を、私は嬉しく思っていた。