Japanische Klassiker mit Furigana
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おちょうふじん
お蝶夫人
三浦 環
Lesen Sie お蝶夫人 (おちょうふじん) von 三浦 環 (みうらたまき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 123.730 Zeichen · 242 Bildschirme
この日も朝も昼も夕もお粥と卵を差上げたが、田舎の人達にお話はしないでねむって居られた。
私は大丈夫ですからというて、橘次郎さん達を宿屋に案内させた。
母の夕食は七時半で、
「お口をあけて」
という私に、大きく口をあけて私のすすめる食事を全部すませたので、私はまた夜中に起きてみましょうと思ったが、午後八時頃から母ののどがゴロゴロとなりはじめたので、私はその脈をとってみたら百三十を数え、その次の一分には百四十を数え、だんだん早くなるので私は、
「ママちゃん死んではいやよ」
というた時、母の片方の眼から涙が一ツ落ちてそのまま脈は止まり、のどのゴロゴロもなくなり、はや母は呼吸をしなくなったのだ。
仏様のような美しい顔で母は死んだ。お医者様も間に合わなかった。外は嵐の音のすさまじい。母は静かに眠って、もう身体を動かしても痛い痛いという声もなく、私のするままに手足は揃えられた。
昭和二十年四月十九日午後九時である。母の帰らぬ旅に出たその時、私はこの世にただ一人残された。ああ「ママちゃん死んじゃいやよ」などいわねばよかった。あの母の涙が、私にとても申し訳ない苦しみを母に与えたしるしと思われて、私はつらかった。