Japanische Klassiker mit Furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lesen Sie さぶ von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 210.521 Zeichen · 415 Bildschirme
生活はごくつましかったので、その残りはまだ三十両以上もあった。それを妻が発見し、出奔するときに残らず持っていってしまった。――皮肉なことではあるが、十樫が万一の場合にと大事にしていた金が持ち去られたあと、まもなくその「万一の場合」がやってきた。十樫はその年の冬、急に手足の関節が病みはじめて、寺子屋で教えることもできず、寝たっきりで呻吟するようになった。初めのうちは教え子の親たちに頼んだり、相長屋の人たちの情けで食いつないだが、そんなことが続くわけはなく、一年と経たないうちに態よく長屋を追いだされた。どうしようもない、十樫は恥を忍んで、長沼の本家へ泣き込み、そこで三年のあいだくらした。本家の長沼は二百石あまりの小旗本で、麹町に屋敷があった。家族が多いので生活も苦しかったのだろう、十樫親子は物置のようなところへ入れられ、乞食同様に扱われた。――それでも飢え死をするよりはましだ、と十樫は云っていたが、おせいは三年めに「ここを出よう」と泣いて父をくどいた。本家の末っ子で十五歳になる男の子が、おせいにいたずらをしかけるのである。父に告げればどんな騒ぎになるかもしれない、九歳の知恵でそう判断し、理由は云わずにせがみ続けた。