Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
」と帳場の前へ立ち、壁の鏡にうつる自分の姿を見て半襟を合せ直しながら、
「君江さん。二階に矢さんがいてよ。行っておあげなさいよ。うるさいから。」
「さっき見掛けたけれど、わたしの番じゃないから降りて来たのよ。あの人、先に辰子さんのパトロンだって、ほんとうなの。」
「そうよ。日活の吉さんに取られてしまったのよ。」とはなし出した時会計の女が伝票と剰銭とを出す。その時この店の持主池田何某という男に事務員の竹下というのが附き随い、コック場へ通う帳場の傍の戸口から出て来る姿が、酒場の鏡に映った。蝶子と君江とは挨拶するのが面倒なので、さっさと知らぬふりで二階の方へ行く。池田というのは五十年配の歯の出た貧相な男で、震災当時、南米の植民地から帰って来て、多年の蓄財を資本にして東京大阪神戸の三都にカッフェーを開き、まず今のところでは相応に利益を得ているという噂である。
表梯子から二階へ上った蝶子は壁際のボックスに坐っている二人連れの客のところへ剰銭を持って行き、君江は銀座通を見下す窓際のテーブルを占めた矢さんというお客の方へと歩みを運びながら、
「いらっしゃいまし。この頃はすっかりお見かぎりね。