Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
」
「そう先廻りをしちゃアずるいよ。先日はどうも、すっかり見せつけられまして。あんなひどい目に遇った事は御在ません。」
「矢さん。たまにゃア仕方がないことよ。」と愛嬌を作って君江は膝頭の触れ合うほどに椅子を引寄せて男の傍に坐り、いかにも懇意らしく卓の上に置いてある敷島の袋から一本抜取って口にくわえた。
矢さんというのは赤阪溜池の自動車輸入商会の支配人だという触込みで、一時は毎日のように女給のひまな昼過ぎを目掛けて遊びに来たばかりか、折々店員四、五人をつれて晩餐を振舞う。時々これ見よがしに芸者をつれて来る事もある。年は四十前後、二ツはめているダイヤの指環を抜いて見せて、女たちに品質の鑑定法や相場などを長々と説明するというような、万事思切って歯の浮くような事をする男であるが、相応に金をつかうので女給連は寄ってたかって下にも置かないようにしている。君江は既に二、三度芝居の切符を買ってもらったこともあるし、休暇時間に松屋へ行って羽織と半襟を買ってもらったこともあるので、この次どこかへ御飯でも食べに行こうと誘われれば、その先は何を言われても、そう情なく振切ってしまうわけにも行かない位の義理合いにはなっている。