Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
高山は季節を急ぐという。今日見てゆくこの紅葉もまったく明日は枯木の山となっているのかも知れない。
枯芒を折り敷いて我等は暫く其処で休んだ。其処からは焼岳が手近く真正面に見えた。我等の休んでいる山と、向うの霞沢岳と次第に奥狭く相迫った中間の空にあらわれて見えるのである。焼岳と硫黄岳と二つ並んだ火山からは相連なって濛々たる白煙を上げ、その煙は僅に傾いて我等のいる方角に靡いているのであった。きょうは別しても煙が深い様に見えた。時とするとほんの一筋二筋、それこそ香の煙の様に立ち昇っていることもあるのである。きょうは山の根方からも中腹からも頂上からも山全帯が薄白く煙りたっている様に見ゆる。
「この天気も永くねエな、煙が信州地の方へ向いているだから」
老爺は煙草の煙を吹きながら私と同じ茣蓙に坐っていて云った。
「ホウ、あの煙の向うは飛騨かね」
向う向きに飛騨に靡けば晴れるというのを聞いて私は云った。そして我慢していた慾望が腹痛の様に身内に起きて来るのを覚えながら、それを押し静める如くひそかに息を呑んだ。そして自分も惶しく一二本の煙草を吸いすてたが、やがてツイ側の老爺の顔に微笑を投げ乍ら云ってみた。