Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふたおもてくらべぼたん

両面競牡丹

酒井 嘉七

Lesen Sie 両面競牡丹 (ふたおもてくらべぼたん) von 酒井 嘉七 (さかいかしち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.317 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

一

奈良坂やさゆり姫百合にりん咲き

――常磐津『両面月姿絵』

一

港の街とは申しますものの、あの辺りは、昔から代々うち続いた旧家が軒をならべた、静かな一角でございまして、ご商売屋さんと申しますれば、三河屋さんとか、駒屋さん、さては、井筒屋さんというような、表看板はごく、ひっそりと、格子戸の奥で商売をされている様なお宅ばかり――それも、ご商売と申すのは、看板だけ、多くは、家代々からうけついだ、財産や家宅をもって、のんびりと気楽にお暮しになっている方々が住んでいられる一角でございました。私の家は、そうした町のかたすみにございまして、別に、これと申すほどの資産もございませんでしたが、それにしても、住んでいる家だけは自分のもの――と、こういった気持ちが、いくらか、私たち母娘の生活を気安くさせていたのでございましょう。

母は小唄と踊りの師匠でございました。しかし、ただ今で申す、新しい唄とか、踊とかの類ではなく、昔のままの、古い三味線唄、いわば、春雨、御所車、さては、かっぽれ、と申しますような唄や、そうしたものの踊りの師匠だったのでございます。