Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたおもてくらべぼたん
両面競牡丹
酒井 嘉七
Lesen Sie 両面競牡丹 (ふたおもてくらべぼたん) von 酒井 嘉七 (さかいかしち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.317 Zeichen · 25 Bildschirme
四
温泉宿の生活と申しますれば、どこでも、そうでございましょうが私たちも、ただ、御飯をいただいて、お湯に入ることだけが、一日の仕事でございました。もっとも、日の光が、お部屋いっぱいに差しこむ、うららかな朝、かおりの高い、いで湯に、ほてった身体を宿のお部屋着につつんで、ほっとしています時など、伯母さまは、よく、
「では、千代ちゃん。何か、おさらいして頂きましょう」
と、いつも、きまったように、春雨か、または御所車を弾きまして、御隠居さまは、小さな声でおうたいになりながら、
「ねえ、千代ちゃん、あなたに教わって、すっかり上手になったでございましょう」
と、静かに、お笑いになるのでございました。
御隠居さまは、いつも私を、千代ちゃん、千代ちゃんと、それはそれは、親身の伯母であっても、こうまではいって下さるまい、してくださるまい、と思うほど、私を大切にして下さいました。私も心から伯母さまと呼びまして、部屋の女中までが、
「ほんに、お睦じいことで、お羨ましく存じます」
と、一度ならず、二度までも、私達を前にして、さも、うらやましげに、申した程でございました。
四
私たちのお部屋は、静かな離れ座敷でございまして、三方には中庭を控え、夜なぞ、本館の方から洩れてくる部屋部屋の火影が、植込の間にちらちらと見えるかと思えば、庭の木立