Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふたおもてくらべぼたん

両面競牡丹

酒井 嘉七

Lesen Sie 両面競牡丹 (ふたおもてくらべぼたん) von 酒井 嘉七 (さかいかしち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.317 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

「……しばらく、別府で保養をいたしたいと存じます。千代もつれまして」

と、言っていられるのが、かすかに、聞きとれたのでございました。私は、その方の事は、何もお訊ねいたしませんでした。勿論、そうした事は失礼と、存じていたからでございます。しかし、

「千代を連れまして」

と言われた言葉が気になりましたので、それとなく、お聞きいたしますと、御隠居は、笑いながら、

「いいえ、違いますよ、お師匠のお話をいたしまして、千代と思って、お連れ申して行く、とお話いたしていたのでございます。実はあれは、親戚にあたる者でございまして、私の姪に、師匠ほどな手頃の、千代という娘のあった事を知っているのでございます」

と、こう申されたのでございました。それから、幾度も、あの千代が生きていましたら、ほんとに師匠ほどでございます。そういたしましたら、私も生き甲斐があるのでございますが、三年前に死にましてからは、ほんとに、世を味気なく暮して参りました。しかし師匠にお稽古して頂く様になりましてからは、すっかり、この世が明るくなった様に感じまして、自分ながらに、大変、喜んでおります。と、こんなことを申されたのでございます。