Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
Lesen Sie 何が私をこうさせたか (なにがわたしをこうさせたか) von 金子 ふみ子 (かねこふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.571 Zeichen · 383 Bildschirme
と主人はやや調子を柔らげたが、しかし寛容を示さなかった。そしてつづけた。
「まだ一人だって帰って来てはいないよ。それだのにあんないい場所をもっている君が一番さきに帰るなんて法はないよ」
「ええ、ですけど、ちっとも売れないんです。夕方の夕立で人足がすっかり減ってしまったんです」
私は訴えるような気持ちでこう言ってみた。が、主人はなお私の立場に同情してくれそうもなかった。
「そりゃたまには悪い晩もあろうさ。だが、あんないい場所を今頃からあけてもらっては困るよ、売れなくても規定の時間だけは辛抱して立っていてくれなきゃ、今後、場所がわるくなるからね」
不承不承私はまた引き返した。が、人通りはもうめっきり減って数えるほどもなかった。無論私は「ゆうかーん」を叫ぶ勇気はなかった。たまに一声二声叫んでみると、その声は上野の森に咽び泣くように反響するのみで、自分の惨めさをその反響に映して見るような気がした。
橋の欄干に凭り掛って、私はただ涙ながらに時の経つのを待っていた。大時計の上には澄み渡った空に星が二つ三つきらめいていた。
広小路の方から空の人力車が一台やって来て私の前に止まった。