Japanische Klassiker mit Furigana
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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
Lesen Sie 何が私をこうさせたか (なにがわたしをこうさせたか) von 金子 ふみ子 (かねこふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.571 Zeichen · 383 Bildschirme
「大かた下宿屋廻りの淫売なんだろう?」
とそこへ玄が戻って来た。そして五円紙幣を一枚私の手に握らせた。涙を呑んで私はそれを受取った。
騒ぎつづけている人達を残して私はその下宿を出た。もう十時すぎだった。ひどくはないが雨が降っていた。傘もなし下駄もなかったが、質を受け出さねばならぬので買うわけには行かず、びしょびしょと雨に濡れつつ、低い下駄ではねをあげながら巣鴨の久能さんの家まで歩いて行った。
「ごめんなさい」と私は、久能の家の玄関の中に飛び込んだ。
「はい」と答えて出たのはしかし久能ではなかった。
「あの、久能さんは?」
「久能さん? そんな人知りませんが……」
私は呆気にとられてその家を出た。そして、どうしたのだろうと、近くの「労働社」へ行って訊ねてみた。
労働社にも私の知っている者は一人もいなかった。けれど久能さんの消息だけはわかった。
「久能さんですか、あの人は三木本君と一緒に大阪の方へ行きましたよ」と、労働社同人の一人が教えた。
「そうですか、困っちゃったなあ」と私が言うと、
「何か御用だったのですか、失礼ですがあなたはどなたですか」と相手は言って、まあ遊んで行けとすすめてくれたけれど、私は自分の名をも語らずにそこを出た。