Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
Lesen Sie 光り合ういのち (ひかりあういのち) von 倉田 百三 (くらたひゃくぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.439 Zeichen · 263 Bildschirme
しかし祖母に向けては何も言わなかった。これは後の話だが、この祖母が八十の祝いの時父は尾道や、広島や、三次の親戚たちを招き、傾きかけた家産の中から、費用を惜まず盛んな賀を張った。母のきょうだい達、孫たちが多く集まった。尾道市の長老として名のある祖母の弟新助翁が本家として正客であった。親戚の一人が祝詞を朗読して、
百平(父の名)氏温厚玉の如く、義母に仕え孝養到らざるなく、家庭に波風なく……
父はこの時ばかりは嘸満足であったろう。もとより父には養子として親戚への義理立てがあったのだ。しかし柔和、恭順、わざとらしくもなく、長い年月の間を、あれ以上には誰れにも出来ない気がする。
これも後のことだが八十三でこの祖母が死んだ時、裏座敷では四女の政子姉がもう不起の床に就いており、尾道では三女の種子姉がこれも余命幾ばくもないという。同時に三人の不幸が襲って居たのだが、祖母の息を引きとった枕元で、死顔を沁々と見て、
「とうとう参らせて貰いなさいましたか」
と静かに、実に素直に父は言った。涙は落さなかった。数十年間を見送り果したという肩の軽さと、自然の悲しみと追憶とのまじった表情であった。